上野冨紗子『認知症ガーデン』を読んで

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    新曜社『認知症ガーデン』

    上野冨紗子著

     

     

    認知症について考えることが、人文の深遠に通じることを確信させてくれる一冊です。ラカン哲学や社会学の用語が多く登場しますが、驚くほど平易な言葉で説明されており、一息に通読できます。
    筆者がものごとを深く考える人物であるからこそ、「書かれなかったこと」に注目してしまいます。中盤に「排泄」にまつわる話題があり、認知症に対する「偏見」を考察していると思われる部分があるのですが、筆者は作中で一度も「偏見」という語を用いません(確認のために二度読みましたのでおそらく)。「偏見」と言われる態度を「偏見」であると容易に喝破せず、じっくりと見据えながらその源流にまで至ろうとする姿勢は、筆者の知的誠実さの表れであると思いました。
    本書は読み進めると複数回の「問い直し」が用意されており、螺旋階段のように思索が深まっていく体験をします。どなたが、いつ読んでも発見があることは間違いありませんが、特に自分のような初学者にはお勧めできます。



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