上野冨紗子『認知症ガーデン』を読んで

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    新曜社『認知症ガーデン』

    上野冨紗子著

     

     

    認知症について考えることが、人文の深遠に通じることを確信させてくれる一冊です。ラカン哲学や社会学の用語が多く登場しますが、驚くほど平易な言葉で説明されており、一息に通読できます。
    筆者がものごとを深く考える人物であるからこそ、「書かれなかったこと」に注目してしまいます。中盤に「排泄」にまつわる話題があり、認知症に対する「偏見」を考察していると思われる部分があるのですが、筆者は作中で一度も「偏見」という語を用いません(確認のために二度読みましたのでおそらく)。「偏見」と言われる態度を「偏見」であると容易に喝破せず、じっくりと見据えながらその源流にまで至ろうとする姿勢は、筆者の知的誠実さの表れであると思いました。
    本書は読み進めると複数回の「問い直し」が用意されており、螺旋階段のように思索が深まっていく体験をします。どなたが、いつ読んでも発見があることは間違いありませんが、特に自分のような初学者にはお勧めできます。


    寄稿「5000のカフェで認知症を考える時代へ」

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      2018年3月3日(土)、横須賀市で市民公開講座「認知症について認知症の人から学ぼう!」が開催されました。500人規模の会場が満員という盛況振りで、主催されたみなさまのパワーと、それに呼応する市民の関心の高さに圧倒されるような3時間でした。

      この講演会に合わせて『2018年三浦半島&かまくら 認知症お役立ちBOOK』という冊子が特別編集され、広域ケアパスのように各種機関や様々な集い、認知症カフェなどの情報がまとめられるなか、「5000のカフェで認知症を考える時代へ」と題する拙稿も収録していただきました。ご依頼くださった阿瀬川孝治先生、ならびに編集委員の皆様に、厚く御礼申し上げます。

       

      『2018年三浦半島&かまくら 認知症お役立ちBOOK』

      http://www.yokosukashi-med.or.jp/archives/2710

       

       

       

      「5000のカフェで認知症を考える時代へ」

       

      日本の認知症カフェ

       日本の認知症カフェは1997年にオランダで始まったアルツハイマーカフェがモデルとなったとされます。しかし、全国の認知症カフェを訪れてみると、この説明はあまり実態に合っていません。日本においてオランダ型のプログラムを正しく導入しているカフェは少数であり、多くの主催者・参加者らはオランダ型カフェとは違った「イメージの源流」を持ちながら認知症カフェを開設・運営しています。

       日本の認知症カフェの「イメージの源流」とは、主に先行して広まっていた次の3つの取組みです。

       

      1.家族会

      相談、傾聴、ピアサポート、勉強会、など

      2.ミニデイサービス

      音楽、体操、ゲーム、クイズ、脳トレ、各種療法、介護予防、認知症予防、など

      3.コミュニティカフェ

      常設、飲食、地域交流、多世代交流、ごちゃまぜなど

       

       これらの要素をモザイクのように組み合わせ、日本の認知症カフェはそれぞれ独自の個性を獲得しています。

       このように多彩な活動が存在することは、日本の認知症カフェ最大の特徴です。今後、戦後の自由な時代に青春期を送った世代の登場により、高齢者の好みや趣向は(たとえば音楽の好みひとつを取っても)ますます細分化していくと予想されます。インフォーマルであるがゆえに小回りのきく認知症カフェが、その多様な好みの受け皿としてあることは、望ましい方向性だと言えます。大切なのは多彩なカフェを参加者が選択できることであり、そのための情報にアクセスできることです。

       

      認知症カフェの役割

       認知症カフェは参加者の属性ごとに異なる意義を見出せます。一例を挙げれば、当事者にとってのピアサポート、家族の相談場所、あるいはレスパイト、地域住民には認知症に関する正しい情報との接点であり、専門職にとっては地域のニーズを把握する機会になります。

       もちろん純粋に楽しみの場であることは、すべての人にとって重要です。運営が上手くいっているカフェほど、専門職スタッフも普段の立場を離れて楽しんでいる様子がうかがえます。

       それらを踏まえた上で、「2012京都文書」で示された「疾病観を変える」という理念が忘れられてはなりません。「認知症になるくらいならガンになった方がマシ」といった意識がいまだ世間に残っているのは、認知症の疾病観が終末像を中心に構築されているためです。認知症カフェには、地域包括ケアシステムの一角を担いつつ、誤解のない初期の疾患イメージを確立する役割が期待されます。初期イメージの改善を端緒として「疾病観を変える」という方向性は、パーソンセンタードケア理論におけるトム・キットウッドの「古い文化から新しい文化への移行」という考えと一致します。

       

      認知症カフェのこれから

       2017年3月に矢吹知之氏が宣言したように、日本はすでに世界一の認知症カフェ大国です。ここ数年、認知症カフェの設置数は年ごとに倍増しており、2018年度には全国で5000カ所に迫る勢いです。名古屋市のように、すべての中学校区に設置するという目標を達成する自治体も現れてきました。これからは数だけでなく内容が問われる段階を迎えます。

       ミニデイサービス色の強いカフェで行われる「認知症予防」のプログラムは、その是非をめぐり議論が起きています。「予防」という名目は人々の関心を惹き、多くの参加者を集めることができますが、その認知症に関する理解を中途の段階で停止させ、むしろ忌避感情やスティグマを強めてしまう弊害があります。認知症カフェにおけるすべての活動は、認知症の人とその思いに対する想像力と共感を前提に行われるべきです。

       コミュニティカフェ色の強いカフェでは、子育てやハンディキャップなど、認知症とは異なる社会的課題を持つ人々が居場所を共にする「ごちゃまぜ」と呼ばれる方向性が現れています。「ごちゃまぜ」は、かつての宅老所について叙述する際のキーワードであり、福祉の原風景ともいえる魅力を感じる人も多く、今後大いに求心力を持つと予想できます。

       「ごちゃまぜ」は確かに優れた包摂的理念です。しかし一方で認知症特有の課題は相対的に矮小化されがちです。その雰囲気が合わない当事者がいることも想定されなくてはなりません。「ごちゃまぜ」のカフェと同時に、例えば認知症を持つ当事者自身をコンセプトとした、その人を囲むような、よりパーソナルなカフェという取組みがあってもいいと思われます。

       現在の認知症カフェには、当事者を交えた「対話」の機会が質・量ともに不足しています。自由なおしゃべりとも異なる、物事を深く考え、語り、聴く機会は、認知症カフェの本来の主旨から考えても、もっと多くあるべきです。

       その場合、1992年にパリで始まり、国内においては大阪大学臨床哲学研究室が中心となって取り組まれてきた哲学カフェの対話法が参考になります。哲学カフェが、家族会、ミニデイサービス、コミュニティカフェに続く、認知症カフェ第4の源流となれば、わたしたちは全国5000カ所の「考えるカフェ」を持つことになります。

       

       

       


      【イベント出演】「29年度ぶっちゃけトーク総まとめ」3月4日・富山県高岡市

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         3月4日(日)に「全国認知症カフェガイドon the WEB」案内人のコスガ聡一が、

        演者の一人としてイベントに参加します。


         主催者から「ぶっちゃけ」を主題として与えられたため、

        『教科書に載らない認知症カフェのはなし』と題して、

        いつもとちょっと攻めた内容でお話をさせていただきます。


         第2部では特色ある活動で知られる富山県内の団体のみなさまと

        、異種格闘技ならぬ『ごちゃまぜ居場所VS認知症カフェ』というテーマで、

        ぶっちゃけトークが予定されています(何が起こるのかまだ知りません・笑)。


         参加ご希望の方は、2月25日までにチラシの連絡先までお申し込みください。

         

        <参加予定のみなさま>
        金沢「サポートハウス」
        羽咋「夢生民」
        富山「ここらいふ」
        富山「富山ダルクリカ バリークルーズ」
        高岡「ひとのま」
        富山「フリースペース Hope」
        南砺「ほっこり 南砺」
        砺波「みやの森カフェ」ほか

         

         

         



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